私たちの身近にある神社とお寺。ほとんどの方が初詣や七五三、そして有名な寺社へは観光などで何気なく足を運んでいることでしょう。このふたつには何となく似ているというイメージがありませんか?
例えば初詣も七五三も神社にお参りする方もいれば、お寺にお参りする方もいます。それぞれの違いについて、神社は神様、お寺は仏様がいる……という何となくの概念で理解している方がほとんどではないでしょうか。今回は、神社とお寺の違いについて、誰でもわかりやすいように、詳しくご説明していきたいと思います。
どうして神社とお寺はこんなに似ている?
神社とお寺。この違いが明確に答えられる方は限りなく少ないと思います。海外の方に尋ねられても上手く答えられる方は少数でしょう。ではどうしてこんなに混同してしまうのでしょうか。その原因は奈良時代にまで遡ります。
奈良時代には「神仏習合」と呼ばれる思想があり、仏教をメインに指導を調和させていくという考えが持たれていました。そのため、神社の中にお寺が建てられたりしていたという歴史もあります。実際に、奈良県にある宝山寺は、本来なら神社にあるはずの鳥居が建っている大変珍しいお寺として知られています。
この他にも観光地として有名な東京の浅草寺には浅草神社が隣り合っていることで有名ですが、これも「神仏習合」の名残ではないかと考えられています。
明治時代になり、神と仏をはっきり区別した上で神道を国の宗教とする「神仏分離」の思想が生まれたことで神社とお寺の概念は区別されるようになってきましたが、「神仏習合」はなんと1000年間も続いていたことから、未だに私たち日本人の中でそれぞれを混同して考えてしまう要因になっていると言えるでしょう。
そもそも神社とは何か
では、まず神社とはどのような施設なのでしょうか。神社とは神道の考え方に基づいた施設です。神道は自然信仰が基軸となっていることから、その昔に信仰されていた自然があった場所や、神聖な儀式が行われていた場所が神社の起源です。神社には神様が祀られており、神様にお仕えする存在として神主と宮司と巫女がいて、彼らによってあらゆる儀式が執り行われています。また神社には八百万の神が祀られていると考えられており、神道ではあらゆる場所に神様がいると考えられています。例えば天照大御神などといった日本の神様だけではなく、徳川家康や菅原道真といった歴史上の人物を神様として祀っている神社もあるほどです。
さらに大きな違いとして、神社では入口に鳥居が設けられています。この鳥居には意味があり、神聖な場所である神社の内側のスペース・神域と、私たちが暮らしている世界・俗界を分けるために建てられています。鳥居は神社の象徴という役割を担っていますが、神社内に不浄なものが入ることがないように防ぐ役割も果たしています。
お寺とは何か?
では、もう一方のお寺はどのような施設なのでしょうか。お寺とは仏教の考え方を実践する施設です。仏教を日本固有のものだと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、元々は紀元前5世紀ごろにインドの釈迦が唱えた教えがその基礎となっていますので、海外からやってきた信仰になります。
仏教はインドから来たものですので、お寺にはお釈迦様、阿弥陀様、観音様と言ったようなインドの仏様を祀っています。神社の神様にはお目にかかることはできませんが、お寺の中には仏様の形をした仏像が祀られているのも大きな特徴です。そして、お寺では住職、僧侶、尼僧と言ったお坊さんがお勤めや修行を行っており、お寺の中に駐在されている人々も全く異なります。
神社のシンボルといえば鳥居と書きましたが、お寺にはもちろん鳥居はありません。その代わりに山門と呼ばれる門があります。基本的にお寺には「〇〇山△△寺」というようにお寺の名前の前に山号が付くのが一般的です。ここから山門と呼ばれるようになっています。役割としては鳥居と同じで、門を境界として神聖な仏様の世界である聖域と私たちの暮らす俗界を区別しています。
神社とお寺の参拝方法について
神社とお寺はそれぞれ違うものですから、参拝方法も当然異なります。今回は、神様や仏様に失礼のないように正しい参拝方法もご紹介していきます。
まず神社では「二礼二拍手一礼」を行うのが基本的な形です。鳥居の前で一礼してから参道の左右の端側を進み、拝殿に向かいます。参道の中央は神様の通り道と言われていますので、堂々と真ん中は通ってはなりません。手水舎にて手、口を清めてからお賽銭と鈴を鳴らしたら、2回礼をして手を2回叩き、再度1回だけ礼をします。
お寺の場合は拍手は行わず、合掌ポーズが基本の形です。お寺の参道はどこを歩いても構いませんので、まず山門で一礼をして参道を歩いて本堂へ進みます。手水舎で手と口を清めたら、常香炉があるお寺では煙を浴びてお線香をお供えし、仏像の前でお賽銭と鈴・鐘を鳴らし、姿勢を伸ばして静かに合掌をしましょう。ご利益祈願をしたら手を合わせた状態でお辞儀をします。最後に、山門から出る前に本堂へと一礼をしたら参拝終了です。
まとめ
私たちの身近にある神社とお寺は、日本の信仰と外国の信仰と言う点でも異なりますし、崇拝している対象も全く異なっています。神仏習合の考え方から日本では同じ敷地内に神社とお寺が建てられている例もあり、混同されることも多いものですが、今回ご紹介しましたように崇拝対象が異なる事からも参拝方法は全く違うものですので、これからそれぞれの施設を訪れてお参りする際は正しい方法で参拝するように心がけましょう。正しい参拝をする事で良いご利益を頂けるかもしれません。